厳格なカーテン

moorings2006-02-28

劇場へ向かう途中、雨が激しく降り始めた。気は高まり、まさに台風の日の如くドキドキしていた。劇場に着き、席に着く。後ろのおばちゃんが、『もう始まるわよ』と教えてくれた。そして忘れる事の出来ない光景を目撃した。20mはありそうな舞台のカーテンは、じっとその時を待っている。その時は突然春一のようにやって来た。無着色であった景色は、一瞬にして色を纏、舞った。幕は開かれた。
あっという間の出来事は、三時間に及んでいた。しかし身体は竦み、目を離す事すら出来ないが、それが心地よくもあった。そして気づけば劇場の椅子になっていた。幕はまた綴ざされ、劇場をあとにしようと外に出ると、雨は止み、真青な空と南よりの強い風が、眩しく身体を押し出してくれた。その日、オペラの虜になった。