最近のMoMA

夏になり、ニューヨークは日本でいう年末年始である。ギャラリーは次のシーズンへ向け準備をしたり、スペースのリノベーションを行ったり、、、こんな時期だけに美術館へ足を運ぶことが多くなる。ということでMoMAに、、、
6階の特別展示の一つは『DADA』もう一つはアイルランド人、映像作家『Douglas Gordon(ダグラス・ゴードン)』の展示だ。90年代、イギリスのダミアン・ハーストなどに代表される『センセーション』とは対照的に、アイルランドアートにスポットを当て、96年にはターナー賞も受賞した。彼の映像は、写真にもあるように、クラシック映画などを重ね合わせたり、コマ送り、スクリーンを二つ使いシンメトリックに見せたりと、クラシック映画に違う視点の見え方を提示する。時にそれは観覧者に不快感すら与えてしまうものもある。以上はクラシック映画を素材としている場合を述べたが、ほかに像を映した『Play Dead; Real Time(2003)』手の緩やかな動きを映した『Scratch Hither(2001)』などもあり、近年は素材も様々であり、社会的な物も目立つ。
今回展示されているものの中で印象的に写ったのは、3つのスクリーンを使い、同じ映像が上下交互逆さに映されており、男性が指揮者のように手を動かし(ウイリアムフォーサイスの手の動きのような)オーケストラに合わせて、男性の動きを動きに逆らうように切り取り、また同調する。それは見事に音を視覚で感じ得る物で、スクリーンに映る男性は『男性』という物質的、視覚的認識から、単に光の連続、残像として捉え、観るという立場がいつの間にか、観られているような錯覚すら感じてしまう。なかなか歯ごたえのある展示だった。
また、3階の版画のセクションでは『Since 2000: Printmaking Now』と題し、2000年以降にパブリッシュされた版画の展示が行われている。出品作家は『Kelley Walker』『William Kentridge』『Matthew Barney』『Elizabeth Peyton』など、日本でも知られる作家から『Swoon』『Clris Johanson』『Ryan McGinness』といった面々まで。内容もエッチングリトグラフ、スクリーン、オフセットと幅広い。しかし作品を見ていると、オフセットプリントにはどうも『版画』として見てゆくことが難しい。少し頭の中がアカデミックなせいもあるのだろうが、ポスターに見えて仕方がない。そもそもポスターと刷り方は同じなのだが、、、写真でも言えることだが、メディアの差異がなくなって来ているのだろう。これについてはまた今度書いてみたい。