夕日は沈む

誰かが手を挙げ、またどこかで誰かが手を上げる。数字の列は勢いよく数を増やし、丸を増やして行く。年に2回のニューヨーク・アートオークション・シーズンは終わりを迎えようとしている。版画から始まり、ドラ・マールの肖像は見る事の無い札束と引き換えに、誰かのものになり、オークションを締めくくるかのようにコンテンポラリーアートのオークションが始まった。クリスティーズでのドナルドジャッドは、パート1に出品された26点合計で2446万8800ドルで落札されたり、アーティストのオークション・レコードが続出したり、全体を通して価格の高騰が目立ち、今まさにバブル山の頂上付近にいる。日本人作家では、村上隆が100万ドルの大台に、続いて奈良美智は95万ドルと今までの最高落札価格を軽く上回った(ハンマープライス)落札のされ方は、二人が値段を引き上げて行った形だったが、最近、不落札や価格の低迷、またチャイニーズ・コンテンポラリーアートに押されていた事もあり、歯止めをかけるきっかけになるのではないだろうか。
前評判以上には値段を付けなかったのは、サザビーズに出品されたロイ・リキテンシュタインのシンキング・サンと、クリスティーズに出品されたアンディー・ウォーホルのキャンベル缶だろう。会場は静まりビットも無い。わずかに手を上げたバイヤーがすんなり落札していた。予想落札価格は当てには出来ない。リキテンシュタインの『シンキング・サン』は沈んでしまったようだ。
さて、バブル真っ盛りで、円高傾向にあるなか、この状態がいつまでも続くというのは、非常に判断が難しい。ましてやバブル初体験の人間には、現在の価格が基準になって行くというのは、怖さすら感じる。傍観者である今、何を見る事が出来るだろうか。